プロダクトマネージャーはどこから来たのか 経歴の傾向を分析

2023.11.30
データ活用

執筆:天野彩
作図:上石尊弥
リサーチ協力:長峰源樹 / 秋山紘樹

「源流を探る」シリーズでは、採用が難しい人材の「源流」をたどり、希少人材の来歴を調査、分析します。素養をもつ可能性が高い人材の採用と社内での育成に、ぜひお役立てください。

3回目のテーマはプロダクトマネージャー(PdM)です。PdMとして働くために必要な素養については「プロダクトマネージャーに求められるスキルと経験とは」をご覧ください。

なおプロダクトマネージャーはPMと表記されることもありますが、本記事ではプロジェクトマネージャー(PjM)と区別するためにPdMと表記します。

「エンジニア / データ」最多だが合計で24%

ダイレクト採用支援などを手がける株式会社ダイレクトソーシングは、過去のスカウト送信支援実績に基づく自社の集計データをもとに、プロダクトマネージャーの職種カテゴリーを調査しました。

2017年4月1日〜2023年4月30日の期間にスカウトを送信した対象者のうち、現職に「​​プロダクトマネージャー」(表記揺れを含む)と記載があった2,201人の1・2件前の経歴3,472件を洗い出し、職種カテゴリーとして整理、集計、分析しました。

図1 PdMの職種カテゴリー(表記のあった経歴3,472件中の割合)

記載のあった1件前と2件前の経歴計3,472件のうち、「エンジニア / データ」(24%、835件)が最も多く、「プロダクトマネージャー(PdM)」(22%、781件)、「プロジェクトマネージャー(PjM)/ コンサルティング」(13%、451件)、「営業」(9%、313件)、「マーケティング」(7%、250件)、「デザイン」(4%、127件)、「学生」(3%、113件)が続きました。

ソフトウェアエンジニア、データサイエンティスト、機械学習エンジニアなど「エンジニア / データ」の来歴が一番多く、来歴全体の約4分の1を占めました。
これは「プロダクトマネージャーに求められるスキルと経験とは」の記事でご紹介したとおり、PdMは主にIT分野の製品の開発や販売の責任を負う職種であり、開発者との共通言語となる技術的な素養があるほうがコミュニケーションを取りやすいことが背景にありそうです。

また「データサイエンティストに求められるスキルと経験とは」の記事でご紹介したとおり、データサイエンティストもPdMと同様に職務範囲の定義は定まっておらず、多くの場合「ビジネス力」「データサイエンス力」「データエンジニアリング力」の3つのスキルセットを持っていることが求められます。このことから、PdMに求められる幅広い職責に対応できる人材が育ちやすい分野だといえそうです。

マネジメントや販売分野の経験者も多数参入

「エンジニア / データ」に次いで、プロダクトマーケティングマネージャー(PMM)を含む「PdM」(22%)、コンサルタントやPjMなど「PjM/コンサルティング」(13%)といったマネジメント職と、「営業」(9%)、「マーケティング」(7%)といった、ビジネス職の中でも特に販売の分野の経歴が目立ちました。

なおここでは、コンサルタントの必須スキルにプロジェクトマネジメントが含まれており[1]、コンサルティングとプロジェクトマネジメントの職務内容の親和性が高いことから「PjM / コンサルティング」を1項目にまとめました。

一般社団法人プロダクトマネージャーカンファレンス(pmconf)実行委員会による2022年の調査でも[2]、プロダクトマネジメントに従事する人がPdM以外で最も長く経験した職種は「エンジニア」が最も多く、「PjM」が二番目でした。 この結果からも、エンジニアやPjMを経験した人がPdMに多数参入していることがわかります。

「その他」(17%、602件)には、「founder(創業者)」「co-founder(共同創業者)」など創業者(表記揺れを含めて計22件)や、「CEO(最高経営責任者)」「代表取締役」など経営者(表記揺れと創業者との重複を含めて計13件)といった組織のトップ層やマネジメントの役割を担った経験がある人も多数いました。

「プロダクトマネージャーに求められるスキルと経験とは」の記事でご紹介したとおり、PdMとして働く上では、開発者・利用者・ビジネスの観点で幅広い視点を持つことが必要です。

「学生」が3%と、記載のあった経歴の97%が職歴でした。様々な分野での職務経験が活きる職種のため、新卒の人材よりも複数の業務を経験した人のほうが適性があることがうかがえます。
さらにその職歴について「エンジニア / データ」、「PdM」、ビジネス職である「PjM / コンサルティング」「営業」「マーケティング」の小計のそれぞれが2〜3割を占めていたことから、幅広い経歴の人が参入している職種だといえそうです。

参考文献
[1] 独立行政法人情報処理推進機構など, 2006年, スキル領域とスキル熟達度(3)コンサルタント
[2] 一般社団法人プロダクトマネージャーカンファレンス実行委員会, 2022年11月2日, 日本で働くプロダクトマネージャー大規模調査レポート2022, P8, 13

メールマガジン