データサイエンティストはどこから来たのか 経歴の傾向を分析

2023.08.31
データ活用

執筆:天野彩
作図:上石尊弥
リサーチ協力:長峰源樹 / 秋山紘樹

このシリーズでは、採用が難しい人材の「源流」をたどり、素養をもつ可能性が高い人材の採用と社内での育成に役立てていただくために、希少人材の来歴を調査、分析します。

2回目のテーマはデータサイエンティストです。データサイエンティストとして働くために必要な素養については「データサイエンティストに求められるスキルと経験とは」をご覧ください。

コンサルなどビジネス分野からの参入も

ダイレクト採用支援などを手がける株式会社ダイレクトソーシングは、過去のスカウト送信支援実績に基づく自社の集計データをもとに、データサイエンティストの職種カテゴリーを調査しました。

2017年4月1日〜2023年4月31日の期間にスカウトを送信した対象者のうち、現職に「データサイエンティスト」(表記揺れを含む)と記載があった1,671人の1・2件前の経歴2,432件を洗い出し、職種カテゴリーとして整理、集計、分析しました。

図1 データサイエンティストの職種カテゴリー(表記のあった経歴2,432件中の割合)

記載のあった1件前と2件前の経歴計2,432件のうち、「AI / データサイエンス」(38%、935件)が最も多く、「ソフトウェア」(18%、443件)、「その他」(12%、303件)、「研究職」(11%、256件)、「学生」(8%、206件)、「コンサルティング」(8%、199件)、「機械学習」(4%、90件)が続きました。

データサイエンティストやデータアナリストなど「AI / データサイエンス」の来歴が最も多く、約4割を占めました。これまで別の組織でデータサイエンス領域で働いていた人が、同じ分野でキャリアチェンジをしたことがわかります。

一方で、8%を占めた「コンサルティング」など、ビジネス領域で経験を積んできた人が多数参入していることがうかがわれたのが今回の結果の特徴です。

計303件と12%を占めた「その他」には、「営業 / マーケティング」(41件)、CEOなど「企業経営」(21件)、会社の経営に携わる「経営企画 / 事業企画」(28件)などビジネス分野の経歴も多数ありました。
また、「ハード / 生産」(35件)、「教員」(15件)、アクチュアリー(保険や年金の分野での数理の専門職)を含む「金融」(12件)といった分野の記載もそれぞれ複数件ありました。

データサイエンティストに求められるスキルと経験とは」の記事でご紹介したとおり、データサイエンティストとして働く上では、ビジネスの知見も、データサイエンスやデータエンジニアリングの知見と同じくらい重要です。過去に企業経営戦略を考えてきた人たちが、これまでの知見を活用して参入していると考えられます。

2位は「ソフトウェア」 研究との距離も近い

システムエンジニア、ネットワークエンジニアなど「ソフトウェア」の経歴は全体で2番目に多く、18%を占めました。
エンジニアとして経験を積んできた人はプログラミングスキルなどのデータエンジニアリングの知見を十分に蓄積しており、データサイエンティストに求められる素養の一部をすでに身につけているためと考えられます。

企業や大学などで働く「研究職」と、インターンなどの「学生」は合わせて19%を占めました。
データサイエンスの分野は、日々新たな技術や理論が生まれては急速に広がりを見せており、研究と開発の距離が近いのが特徴です。大学などでデータサイエンスを扱っていた人が、そのバックグラウンドを活かして別の組織に就職したケースが一定数あると考えられるでしょう。
また、本シリーズの初回「機械学習エンジニアはどこから来たのか 経歴の傾向を分析」で分析した機械学習エンジニアと同じく、新しい職業のため新卒などの若い人が参入しやすい分野だということもいえそうです。

機械学習エンジニアなど「機械学習」の経歴は4%を占めました。システムエンジニアやデータサイエンティストなど別の項目と併記されていた場合も「機械学習」にカウントしています。
機械学習エンジニアはどこから来たのか 経歴の傾向を分析」では、データサイエンティストから機械学習エンジニアに転身した例もありました。
ともに新しい職種で混同されることがあるデータサイエンティストと機械学習エンジニアは、プログラミングスキルやデータベースの知識など、必要なスキルに共通項があるためキャリアチェンジをしやすいのかもしれません。

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