機械学習エンジニアはどこから来たのか 経歴の傾向を分析

2023.08.01
データ活用

執筆:天野彩
作図:上石尊弥
リサーチ協力:長峰源樹 / 秋山紘樹

日々急激に技術の進歩が進み、活用される分野が広がっていくAI(人工知能)を用いて新たなシステムを構築する機械学習エンジニアは、どのようなキャリアをたどってきたのでしょうか。

このシリーズでは、採用が難しい人材の「源流」をたどり、素養をもつ可能性が高い人材の採用と社内での育成に役立てていただくために、希少人材の来歴を調査、分析します。

初回のテーマは機械学習エンジニアです。機械学習エンジニアとして働くために必要な素養については「機械学習エンジニアに求められるスキルと経験とは」をご覧ください。

「源流」を探る 1位はソフトウェア分野

ダイレクト採用支援などを手がける株式会社ダイレクトソーシングは、過去のスカウト送信支援実績に基づく自社の集計データをもとに、機械学習エンジニアの職種カテゴリーを調査しました。
2017年4月1日〜2023年4月31日の期間にスカウトを送信した対象者のうち、現職に「機械学習エンジニア」(表記揺れを含む)と記載があった国内在住の380人の1・2件前の経歴を洗い出し、職種カテゴリーとして整理、集計、分析しました。

すると、記載のあった1件前と2件前の経歴計579件のうち、「ソフトウェア」(25%、145件)が最も多く、次いで「機械学習」(20%、117件)、「AI / データサイエンス」(18%、103件)、「学生」(15%、88件)、「研究職」(11%、63件)、「ハード / 生産」(3%、17件)の順に多い結果となりました。
総合職、管理職、コンサルタントなど今回の職種カテゴリーには分類できない職種が記載されていた場合は「その他」(8%、46件)にまとめました。

図1 機械学習エンジニアの職種カテゴリー(表記のあった経歴579件中の割合)

過去の経歴に「機械学習エンジニア」と書かれていた割合は全体の約2割であり、多くの場合、機械学習エンジニアとして働いている人は、現職で初めて機械学習エンジニアとして働き始めたと考えられます。

最も多かったのが、バックエンド、フロントエンド、データベースのエンジニアなどの経歴を含む「ソフトウェア」で、経歴全体の4分の1を占めました。機械学習エンジニアとして働くための基礎的なスキルをソフトウェアエンジニアとして身につけた人が多くいることがうかがえます。

「AI / データサイエンス」の分野の経歴は全体の2割弱を占めました。
データサイエンティストとは、大量に蓄積されたビッグデータを分析し、ビジネスに活用する知見を引き出す職種です。
機械学習エンジニアと同じく新しい職種で、定義が曖昧なため両者は混同されることがあります。機械学習エンジニアは主にシステム構築を担う一方で、データサイエンティストはそのシステムを用いて分析する点に違いがあります。
プログラミングスキルやデータベースの知識など、必要なスキルに共通項があるため、データサイエンティストから機械学習エンジニアに転身するケースもあるようです。

15%を占めた「学生」の集計結果には、博士課程までの学生を含めました。大学院の学生が給与を得ながら研究プロジェクトに参画するリサーチ・アシスタント(RA)、大学院生が学部の学生などの指導を担うティーチング・アシスタント(TA)のほか、インターンと表記されていた件数を含みます。
「学生」が多数を占めた背景として、機械学習エンジニアの仕事は歴史が浅いため、新卒など若い人が参入しやすい分野だと言えるかもしれません。

ポスドクなど、企業や大学などで働く「研究職」と合わせ、研究分野での経歴は全体の4分の1にのぼります。日進月歩で急速に発展していく機械学習エンジニアのキャリアを築くにあたり、常に最新の動向をウォッチしておくことが必要な研究分野での経験は、相性が良いと言えそうです。

機械学習は近年急速に技術が発展した新しい分野であり、機械学習エンジニアは技術の発展に伴い進歩を続けている職種だといえます。技術の発展とともに、今後もさらにキャリアの開拓が進んでいくでしょう。

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